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まずは、下のグラフをご覧ください。
こちらは、筆者がOECDのサイトをもとに作成した、実質賃金指数推移の国際比較です。
この中に、一か国だけ明らかに賃金が伸び悩んでいる国がありますよね。
そう、我らが日本です。。。(泣)
このように、過去25年にわたり、各国の賃金が順調にあがっていく一方で、
日本だけが、賃金が横ばいの状態が続いてきました。
今回の記事では、日本がこのような現状に陥っている背景について説明し、
それをもとに岸田政権が掲げる賃上げ政策について意見を述べていきたいと思います。
日本で給料が上がらない理由
そもそもなぜ、日本の賃金の上昇率は、世界の中でも最低水準となってしまっているのでしょうか?
その理由については、様々な議論がなされており、学術的な解は未だ出ていません。
わたしは、様々な要因の中でも、以下の4つの影響が大きいと考えています。
①企業の生産性の低さ
経済学の理論にもとづくと、賃金は生産性に連動します。
したがって、日本の賃金の低成長は、
日本企業の生産性が低いことに原因があると考えることができます。
生産性は、次のような式で説明できます。
生産性=付加価値÷労働時間
日本では、特に中小企業の生産性の問題が深刻であると言えます。
たとえば、IT化や機械化の遅れから、分母の労働時間が大きいことが指摘されています。
また、中小企業の製造業などは、規模の経済の観点から、
どうしても分子の付加価値を大きくすることが難しい現状にあります。
②厳しい雇用規制
日本では、企業側が従業員を雇用するためには、
非常に厳しい条件を満たさなければなりません。
簡単にクビを切れない社員に対して、高い給料を払い続けることは、
企業にとって大きなリスクなります。
したがって、正社員の給料水準は下がり、その代わりに、
いつでもクビを切れる非正規労働者を採用することになります。
こうして、正社員よりも低い賃金で働く、非正規労働者の数が増加していきます。
厳しい雇用規制は、このような形で労働市場全体に悪循環をもたらします。
③岩盤規制による自由競争の阻害
自由な企業活動を阻害する、多くの規制があることも問題です。
たとえば、医療や農業といった多くの業界では、既得権を守るために、
企業の新規参入や自由な競争を行うことが認められいません。
これでは、イノベーションや生産性の向上は期待できません。
しかし、規制改革を行おうにも、既得権益に固執する強固な反対派が存在し、
推進が難しいという現状があります。
④経済政策の失敗
政府の財政政策や、日銀の金融政策に問題あったことも大きいと考えています。
たとえば、景気が良くないタイミングで強行された消費増税は、
その度に景気悪化を招き、その是非が問われてきました。
また、日銀がもっと積極的に金融緩和を実施し、
市場のマネー量を増やすべきであったとも考えます。
以上のように、様々な要因が重なって今の日本の現状があると考えられます。
岸田政権が発表した賃上げ政策とその問題点
賃上げに対し意欲を見せる岸田首相は、目玉政策として「賃上げ税制」を発表しました。
企業側が賃上げ行った場合、法人税の税額控除を引き上げるという内容です。
具体的には、
- ● 大企業では、賃上げ率4%かつ教育訓練費を増やすと、最大30%の優遇
- ● 中小企業では、賃上げ率2.5%かつ教育訓練費を増やすと、最大40%の優遇
となっています。
一見メリットが大きそうに見えるこの政策ですが、どの程度の効果が期待できるのでしょうか?
わたしは、まったくといっていいほど効果が期待できないだろうと考えています。
その理由は、以下の通りです。
- ● 中小企業の約7割は赤字企業であり、そもそも税制優遇の恩恵を受けられない
- ● 安倍政権時代にも賃上げ税優遇措置がとられたが、これといった効果があげられなかった
- ● 賃上げをすると、それに伴って企業の社会保険料負担も増加する
補足ですが、安倍政権時代に実施した賃上げに関して、期待した効果が得られなかった理由は、
「一時的な優遇があったとしても、この先経済および企業が成長していくビジョンが見えなければ、
一度上げてしまうと下げにくい賃金を上げようとは思わないから」
だと考えています。
このように、今回の賃上げ税制を受け、積極的に従業員の賃金を上げようという
企業は少ないと言えるでしょう。
今後岸田政権には、このような一時的な税制の優遇措置でなく、
継続的な景気の拡大によって企業の賃上げを促進するような政策を検討してほしいと思います。
幸いにも、岸田首相は、首相就任時から賃上げに関して積極的な姿勢を取っています。
わたしたちの給料が少しでも上がるよう、今後の岸田政権の政策に期待したいと思います。
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